ザ カドガンの歴史
ザ カドガンは1887年に創業したロンドンでも長い歴史を有するホテル。
チェルシー地区に佇むクイーン・アン洋式の建物は一見すると貴族の邸宅のようだ。
そう、このホテルの一角ポント ストリート21番地に女優、社会学者のリリー・ラングトリーが暮らしていた。彼女はエドワード7世の幼少期に家庭教師を務めた才媛でもあった。
また、このホテルをロンドンの定宿にしていたのが作家オスカー・ワイルド。彼が罪に問われ逮捕されたのは118号室であった。
四年の改装を経て再オープン
そのザ カドガンは2015年から四年の歳月と4,800万ドルの費用をかけて全面改装、2019年5月に「ザ カドガン ア ベルモンド ホテル ロンドン」として新たな扉を開いた。
改装に携わったのはブレアー アソシエーション アーキテクツ(Blair Associates Architecture)をはじめ、ラッセル サージュスタジオ(Russell Sage Studios)といった建築やインテリア業界の精鋭たち。改装後、ザ カドガンは建築業界からも大きな注目を集めた。
中でも彼らがこだわったのは、古いものと新しいもののバランス。
リリー・ラングトリー宅の正面玄関と花模様のモザイクの床はそのまま残し当時の雰囲気を伝えている。
こじんまりしたレセプションはホワイト、グレー、イエローの3色を使い、中央の創業時から使われている木製の階段をモダンな雰囲気で包み込んでいる。
ホテル内の壁を飾るアート作品は430点。主にイギリスのアーティストの作品を集めている。ホテル全体が現代アートギャラリーのようだ。
客室
ホテルの改装といえば、一般には部屋を増やすことであるが、この改装は64室から54室(うちスイートルームは22室)へと部屋数を減らすことが目的だった。その理由は、ゲスト一人一人へ目が届くサービスを提供したいというホテルのホスピタリティの表れである。
二階部分にあるオスカー・ワイルドの部屋118号室は現在ロイヤル スイートに、建物最上階七階は7つのベッドルームを有するペントハウス スイートに生まれ変わった。
客室のライブラリーのキュレーションは同じチェルシー地区の老舗John Sandoe Booksが手がけ、部屋でくつろぎながらロンドンの文化を感じることができる。

ポント通り21番地
リリー・ラングトリーの邸宅の扉

美しい花模様のモザイクの床

クイーン・アン様式の美しいホテル ザ カドガン