英国の歴史と諜報の記憶に泊まる
英国政治の中心地、ホワイトホールに立つ「ラッフルズ ロンドン アット ザ OWO」。
ホテルが入るThe OWOは、かつてThe Old War Office、英国の旧陸軍省として使用されていた建物である。
1906年、建築家William Youngの設計によって完成したエドワード朝バロック様式の建物には、かつて約2,500人の政府・軍関係者が勤務していた。ウィンストン・チャーチル、T・E・ロレンスをはじめ、英国史を動かした多くの政治家、軍人、情報部員がこの場所を歩いている。
第二次世界大戦中、英海軍情報部に所属していたイアン・フレミングもこの建物で任務に携わった。その経験や諜報活動の世界は、のちに英国秘密情報部員ジェームズ・ボンドを生み出すインスピレーションになったとされる。
建物とその周辺は、『007/オクトパシー』『007 スカイフォール』『007 スペクター』など、5本のジェームズ・ボンド映画にも登場している。
100年以上にわたり一般には閉ざされていたこの歴史的建築物が、2023年、ラッフルズによりホテル、レジデンス、レストラン、ウェルネス施設を備えた新たなデスティネーションとして扉を開いた。
8年をかけて蘇った歴史的建築物
The OWOは英国のGrade II*指定建造物であり、その再生には約8年の歳月が費やされた。
改修を率いたのは、ニューヨークの自由の女神をはじめ、世界的な歴史建築の修復で知られる建築家Thierry Despont。1,000人を超える職人や専門家が、建物に残された歴史的意匠を保存しながら、現代のホテルに必要な機能を組み込んだ。
建物の中心にある大階段、細かなモザイクタイル、木製パネル、暖炉、天井の装飾などは、旧陸軍省時代の記憶を今に伝える。
全長約4kmに及ぶ広い廊下は、かつて緊急の伝達を担う職員が自転車で移動していた場所。床に残された鋳鉄製の格子やモザイクにも、当時の通信設備や軍事施設としての歴史が刻まれている。
壮麗な大階段の2階部分には、ウィンストン・チャーチルが職員に向けて演説を行ったと伝わるバルコニーが残されている。

モザイクの廊下。建物そのものがThe OWOの物語を伝えている。
© Raffles London at The OWO
歴史の舞台に滞在する客室
ラッフルズ ロンドン アット ザ OWOは、39のスイートを含む全120室。
Thierry Despontによる客室は、建物のエドワード朝様式を現代的に再解釈したもの。特注のカーペット、ファブリック、家具、照明に現代アートを組み合わせ、歴史的建築の重厚感と滞在の快適さを両立させている。
廊下のカーペットは建物に残る床の格子模様、窓まわりのデザインは正面に位置するホース・ガーズの制服から着想を得ている。
とりわけ注目したいのが、かつて政治家や軍関係者の執務室だった場所を復元した5つのヘリテージスイートである。
「The Churchill Suite」は、英国軍の重要な決定が行われた旧陸軍評議会室。建設当時から残る暖炉や木製パネル、大きな窓を備え、ホース・ガーズ側の景観を望む。
「The Granville Suite」は、第二次世界大戦中に英国の情報部員として活躍したChristine Granvilleに敬意を表したスイート。彼女はチャーチルが信頼したエージェントとして知られ、ジェームズ・ボンド作品に登場するヴェスパー・リンドのモデルの一人ともいわれている。
歴史上の人物にちなんだスイートでありながら、室内は静かで安らぎに満ちている。国家の重要な決定が下された場所に、ラッフルズのきめ細かなバトラーサービスが加わることで、ほかにはない滞在体験が生まれている。
ロンドンの新しいガストロノミーデスティネーション
館内には9つのレストランと3つのバーがあり、英国料理、地中海料理、日本料理、イタリア料理など、多様なロンドンを象徴するダイニングを展開している。
ラッフルズのホスピタリティ
1887年にシンガポールで誕生したラッフルズは、パーソナルなサービスとバトラーの伝統で知られる。
歴史的建築の壮麗さと客室の安らぎ、プライバシーと社交性。それぞれ異なる要素が共存していることが、ラッフルズ ロンドン アット ザ OWOの魅力である。
マネージングディレクターのOlivier Thomas氏は、立地、歴史、そしてラッフルズのホスピタリティが一つになることで、この場所ならではの特別な調和が生まれていると語る。
英国のレガシーを保存するだけではなく、現代のゲストが新しい記憶を重ねていくホテル。ここでの滞在もまた、The OWOの歴史の一部となっていく。
Interview & Stay Story
髙野はるみによる宿泊体験と、マネージングディレクターOlivier Thomas氏へのインタビューは、The New York Times Style Magazine: Japan「大人のための至福のホテル案内」で
ご紹介しています。
007ゆかりの地に新風を吹き込む
ラッフルズ ロンドン アット ザ OWO
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