1994年にパイパー・エドシック、シャルル・エドシックに入社、2018年からレア・シャンパーニュ専属となり、30年近いキャリアを持つ伝説のシェフ・ド・カーヴ、レジス・カミュ氏が昨年末に引退。引退に際し、カミュ氏が最後に手がけたレア・シャンパーニュ2008の最後のマスタークラスが、フランスメディアを中心に海外メディア向けに3月21日に世界遺産であるランスのトー宮殿で開催され、日本向けには翌3月22日にフィリップ・ミル東京にてオンライン形式て開催された。
カミュ氏が伝説の醸造家と言われる所以は、英国で主催されるインターナショナル・ワイン・チャレンジにおいて、まだ誰も成し遂げたことのない通算8回の「スパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」の受賞を筆頭に、1990年代に当時、注目されていなかったコート・デ・バール地区のピノ・ノワールをプロダクトラインに取り入れ、質の高いシャンパーニュを作り続け、カミュ氏が手がけるシャンパーニュは世界的権威あるガイド誌、評論家、プロフェッショナルたちから高く評価され、世界中のシャンパーニュ愛好家を魅了していることにある。
カミュ氏はまた優れた醸造家であると同時に、わかりやすい丁寧な言葉で、時にはユーモアのセンスを交えながら自身のシャンパーニュを紹介する優れたプレゼンターでもある。
最後のマスタークラスでも、自身の引退に関して「良いことには必ず終わりがある」(Toutes les bonnes choses ont une fin.)というフランスの諺を引用、後継者の二人、モード・ラバンさんとエミリアン・ブティヤ氏を「自分の子供たち」と紹介。
「二人の子供の他に、世界中でレア・シャンパーニュに携わる家族がいる。もちろん日本にも」と日本のスタッフを思いやる言葉は優しい人柄のカミュ氏ならでは。
そして、「良い父親のように、いつも近くにいて何かあったらすぐに駆けつける」と語った。
カミュ氏の二人の子供たち、新しいステージの舞台に上がるのは、グローバル・ブランド・ディレクターのモード・ラバンさんと、醸造を担当するパイパー・エドシックのシェフ・ド・カーヴ、エミリアン・ブティア氏。
(左から エミリアン・ブティヤ氏、レジス・カミュ氏、モード・ラバンさん)
ラバンさんは2018年からカミュ氏と行動を共にし、レア・シャンパーニュの全てを共有し、宝石のようなシャンパーニュとしてパイパー・エドシックのプレステージキュヴェというポジションから独立したラグジュアリーなブランド構築に貢献。カミュ氏はラバンさんについて「私が大切にしている価値観を体現している」と語る。また、ブティア氏はカミュ氏との最初の出会いが14年前であったことを話してくれた。
「ムニエの産地、ショーミュジー村でぶどう栽培農家を営む父と共にパイパー・エドシックのヴァン・クレール(ベースワイン)のテイスィングに参加した時、カミュ氏のテイスティングコメントがとても素晴らしかった」。当時、モンペリエの醸造学校に在籍中のエミリアン青年が、時を経て偉大な醸造家カミュ氏の後継者となった。
奇しくもそれは2008年のこと。カミュ氏の最後のマスタークラスに登場したレア・シャンパーニュ2008が作られた年だ。
レア・シャンパーニュは他のプレステージ・シャンパーニュと異なり、ぶどうの作柄が優れていてもレアのスタイルでないと判断されれば決して作られることのない唯一無二のシャンパーニュ。共通しているのはシャルドネ70パーセント、ピノ・ノワール30パーセントというブレンド比率だけ。1976年のファーストヴィンテージから、この46年間、わずか12のヴィンテージのみリリースされているが、各ヴィンテージにはそれぞれの特徴を表現する言葉が添えられている。
カミュ氏は無限の力を持つブティア氏を2008年ヴィンテージ「無限」、太陽のように光り輝くラバンさんを2006年ヴィンテージ「太陽の恵み」と表現した。
無限の可能性を秘めた永遠に輝くレア・シャンパーニュの未来に世界中が注目する。
レア・シャンパーニュ「レア 2008」
キーワードは「無限」(L’I N F I N I)
〈受賞歴〉
ベスト・ワイン・オブ・ザ・ワールド・コンペティション2021
ワイン・スペクテーター2020 97/100
ワイン・エンスージアスト 96/100
ゴ・エ・ミヨ 18/20
シャンパーニュ&スパークリング ワイン・ワールド・チャンピオンシップ 2020 金賞
インターナショナル・ワイン・チャレンジ2020 ヴィンテージ クラシック ブレンド シャンパーニュ トロフィー&ゴールド
〈2008年〉 温暖な冬、太陽が降り注ぐ2006年とは対照的に雨の多い春、気温が低く夏も涼しい
〈テイスティングコメント〉
イエローダイヤモンドの輝きにホワイトゴールドのニュアンスのある色調。早春に咲く爽やかな春の花の香り。ミネラル、ヴァニラ、ココナッツ、柑橘系果実。セカンド・ノートは塩味を感じるミネラル感、甘草のようなエギゾチックな香り。
長い余韻が口中に続く。最後に塩味とヨードのニュアンスを感じる。
商品のお問い合わせ先
日本リカー株式会社
text by Harumi KONO